竹細工の世界で言う「青竹」とは、材料となる竹に染色など何ら人工的な処理を加えず、山から切り出した自然そのままの竹で籠を編む竹細工のことです。日本国内には何百種類以上もの竹が存在すると言われていますが、竹細工によく使用されるのは、孟宗竹(もうそうちく)、淡竹(はちく)、真竹(またけ)など。中でも「真竹」はしなやかで艶があり、私は真竹を使って籠を編むのがほとんどです。「真竹」で編まれた籠は青々として美しく、そして編みたての「青々しさ」は時間と共に「黄色」を経て、やがて数年もすれば「オレンジ色」に、更に数十年も経てば深く落ち着いた「飴色」へと、自然な輝きを増していきます。



魚籠(びく)のフタ編み途中



 青竹の籠は、生きています。人間の「手」で使えば使うほどに艶が出て、その味わいと風格を増します。何十年以上も前に昔の職人によって編まれた籠を見るときがありますが、それらは色が自然に深まり、見事な姿に変わっています。




70年以上も前、昔の水俣の職人によって編まれた「ご飯じょけ」



 一方、油抜きをした晒し竹(白竹)や、染色した竹(染め竹)を使う竹細工もあります(クラフト系の工芸品や、花かご等)。しかし、野菜の水切りや米研ぎなど、昔の生活はこのような青竹の籠ばかりでした。また、このような昔ながらの竹の生活道具は「青物」と呼ばれ、それら青物を編む職人は、「青物師」とも呼ばれます。私は、その青物師に惹かれてこの世界に入りました。