鰯籠(いわしカゴ)  


 「鰯籠(いわしカゴ)」とは、漁船の両側につけて、カツオ漁の餌となる鰯(いわし)を生かしたまま搬送する籠のこと。左写真は、まだ製作途中ですが、高さは2m以上、孟宗竹を26,7本も使って編み上げる、おそらく世界最大の実用竹籠です。


 これは私が編んだものではありません。ここ水俣には、この「いわし籠」専門の職人さんがおられます。現在では、この「いわし籠」を編む職人は、九州はおろか、全国を探しても、おそらくその方だけでしょう。先日、その方を訪ねて話を聞く機会がありました。と言っても、「いわし籠」は、その方一人で編むのではありません。親方である彼を筆頭に、計4人のチームワークで編み上げます。そして、一年中ある仕事でもなく、シーズンとなる秋口から冬までの限定仕事です。


 このように水俣湾の海岸端で編み、寒風吹きすさむ中での大変な仕事です。完成後は、天候や潮の状態を見て取りに来たお客さんが、すぐ側の港から運んで行きます。





 彼らの仕事は、私たちと違って、真竹で細かいヒゴを取って編むようなものではありません。むしろ大工仕事に近いという感じでしょうか。ところで、私の師匠のように荒っぽい生活の竹籠(荒物)を編む職人は、花カゴのような繊細な竹細工を、「小細工もの」と呼ぶことがあります。しかし、「いわし籠」を編む彼らにとっては、私たちがするような竹細工が、逆に「小細工もの」になるのでしょう。

 先日、彼らの話を聞きに訪ねた折、私が竹籠を編むと知るや否や、彼らから突然「竹を割ってみろ」との声。その場でいきなり孟宗竹を割らされました。何とか無事に割ることができましたが、腕が試されている感じがして、内心冷や冷やものでした。