みなまた環境絵本



 第2回みなまた環境絵本大賞に、「古どうぐ〜るぐる」という作品が選ばれて絵本化されました。古くなりガラクタとされてしまったものを再び蘇らせることで、道具の大切さを学んでいく少年の物語です。本作品では、壊れてしまった蔵の中の古道具たちが、江戸時代にタイムスリップして、職人の手によって見事に息を吹き返します。竹製品について言えば、柄の折れた「ご飯じょけ」や、縁の切れた「一斗じょけ」が登場します。

 ちなみに柄が折れた「ご飯じょけ」とは、下写真のような感じです。かつてお客さんに完成して渡したところ、すぐに修理して欲しいと返ってきてしまったものです。私の師匠はこんな風に柄が折れたりすると、根性が無い!とのことで、「性無し竹じゃ」などとぼやいたものです。絵本の中では、この「ご飯じょけ」に手足がついて、とても愛くるしい感じで描かれています。




 先日、地元の方から、「一斗じょけ」の修理を頼まれました。何でも実家の蔵にずっと眠っていたものだそうで、まさに絵本の中の話だと、自分でもびっくりしました。その蔵は私の師匠がかつて泊まり込みで田舎まわりをしていた地域にあるので、ひょっとして師匠の若い頃の作品かも・・と思いましたが、しかし色々と細かい作りが違っていて、どうやら他の職人さんが作られたものだと思います。

 下写真、左が修繕前、右が修繕後です。修繕前の縁巻き間隔を見てみると、私が師匠から教わった通り、3寸7分ずつの7周巻きで印がつけられていました。縁を巻き直しながら、これを作られた昔の職人と自分が繋がったようでワクワクしました。





 廣島さんは、「カゴは道具じゃ」とおっしゃいました。安易な使い捨てではなく、修繕をしながら長い間その方の暮らしの役に立つ竹の生活道具です。ここ地元では、今もカゴを使ってくださるのは主に70歳代後半以上の方たちですが、最近はその子供世代からも、親が使っていたからと、修繕を頼まれたりするようになりました。細々とですが、こうやって道具の生命が繋がってくれるのは作り手として嬉しい限りです。