かれてご(背負い籠)  



 昨日の朝日新聞の「こだわり会館」という特集欄に、「背負い籠」を収集しているコレクターの方の記事が掲載されていました。東南アジア産も含め、全国津々浦々から集めた「背負い籠」は、全部で80個にも及ぶそうです。写真を見ると、形・大きさ・編み方・・・と、様々です。その土地の地理条件・手に入る自然材料などによって、大きく変わってくるのでしょう。しかし、「物を入れて背負って運ぶ」という人間の運搬行動は、世界共通なように思います。


 現在、水俣でいまだ最もよく使われている竹籠の一つも、この「かれてご(背負い籠)」です。水俣では「背負う」ことを「からう」と言い、「からいてご」が訛って、「かれてご」と呼ばれます。

 私がここ地元集落近辺の方から注文を受けて編んだ「かれてご」の数を、過去二年間を振り返って数えてみました。すると、修繕も含めて20件以上ありました。平均すると約一ヶ月に一個ほど、地元の方から「かれてご」の注文を受けていたという感じでしょうか。「かれてご」は、普通に使えば何十年以上も長持ちします。丁度私がここに移住してきたので、そろそろ「かれてご」を買い替えようかと親切に注文してくださった方もいらっしゃいました。(上写真は、私の家の大家さん)





 一般に「背負い籠」の紐(ひも)の通し方は、籠の縁(ふち)に穴を開けて、そこに紐を通して括り付けるものが多いように見受けられます。しかし水俣式は、桶の輪と同様に編んだものをはめ込み、輪と本体の間に紐を通します。上写真の桶の輪は、一本の竹を5周して編んでいます。胴体の外周の五倍以上の長さを取るので少なくとも7m以上の竹を取る必要があり、手間はかかります。しかし5周も巻けば、時間が経っても決してゆるむことはなく、また、籠に少し圧迫感を与える位にがっちり合わせてはめ込んでいるので、上下にずれることもありません。ひいき目もあるでしょうが、私は他の籠と比べて、この水俣の背負い籠の桶の輪をとても美しく思います。