片口じょけ



 地元の和菓子屋さんからの依頼で、古くなって傷んだ「片口じょけ」の縁(ふち)を取替えました。と言っても、竹カゴではなく、本体の網自体はステンレス製で、握るところの縁だけに「竹」を当てています。この竹とステンレスでできた「片口じょけ」は、かつてどこの職人さんが作られたのか、何ともう50年近く、親の代からずっとその店で使われているそうです。






 下写真のように、竹の先端を引っ掛けて餅米の水を切ります。今回、私のほうで流し台の大きさに合わせて、先端の長さを調節しました。縁が竹になっているメリットとしては、餅米を他の容器に移し変える際、手で縁をパンパン!と叩くのですが、竹だと適度な振動がザルに伝わり、目に詰まった米粒を落としやすいとのこと。(ちなみに右側が市販されているステンレス製のザル。これだと固すぎて、竹のように微妙な揺れの感じが出ないのだそうです。) 竹のしなやかさは偉いものだと、妙なところで感心しています。



 

 長年そのお店で愛用されてきた「片口じょけ」。網自体は昔のままですが、縁の竹は何度も何度も取り替えて使ってこられたとか。以前は、そのお店の近くにおられたカゴ屋さんに竹の交換を依頼されていたそうですが(その方も、私の師匠にかつて弟子入りしてカゴ作りを習われた、いわば私の兄弟子にあたります。)、しかし、その方も今はもう仕事を辞められているので、今回は私が修繕を引き受けることになりました。






 「あつらえる」という言葉を思い出しました。「あつらえる」とは、「注文して作らせる」こと。以前、カゴの注文をくださった方が言われました。「昔の日本には、カゴ屋さんをはじめ桶屋さんや鍛冶屋さんなど、使い手の丈に合わせて道具をあつらえる暮らしがあった」と。師匠もその兄弟子だった方も辞められて、今回は「もう他に頼める人がいなくなってしまって」ということでの依頼。今の時代、カゴ作りは採算の合わないつらい仕事ですが、こんな言葉をかけてもらえると、私は掛け値なしに喜びとやりがいを感じます。