味噌漉し



 地元の注文で、「味噌漉し」を作りました。下は、実際に鍋の中で使っているところですが、柄はある程度長い方が、使いやすいです。ちなみに、味噌自体を自分で作るばあちゃん達も、結構こちらではまだおられます。




 水俣では小さいザルのことを「みそこし」と呼びますが、しかしザルで味噌を漉すことはなく、実際は、このように菊底編みで編んだものが使われます。今回は、深さを9cm程度で作りました。柄が横にぐらぐらしないよう、一緒に竹で縁を巻き、また上に抜けないよう、竹釘を打ち込んでいます。




 
 こんな小さいカゴの方が、返って作りづらいです。底は4本で編み始め、その後4本を追加します。立体に立ち上げるときは編むヒゴの節などが折れやすいので、細心の注意を要します。ちなみに、この磨かない竹の青さは、編み始めてから少し経つと水色に薄まってしまいます。




 下写真は、「くじり」または「ふちこね」と呼ばれ、最も緊張する仕上げの「縁巻き」の時に使う道具です。竹で縁を巻く際、最後に周回するとき、これを使って竹を1周目の下に潜り込ませるのです。(今回の味噌漉しは4周巻きです) 通常は先の曲がっていないくじりを使いますが、直径の小さいカゴは縁に引っかかって中に入らず、このように先の曲がったものでないと役に立ちません。

 実は水俣ではこの先の曲がった「くじり」を使っていた職人はおらず、これがあると便利だと私に教えてくれたのは、昨年98歳で亡くなられた廣島さんでした。独立後まもない私は小さいカゴの縁巻きに苦労していましたが、廣島さんからアドバイスを頂いたあと、さっそく鍛冶屋さんに特別注文して作ってもらった次第です。



 
 

 今年の3月で、廣島さんの一周忌を迎えます。廣島さんは、カゴ作り用の道具も大切にしておられました。「カゴも生活の道具じゃけんど、その道具を作る道具もまた大事じゃ」と、おっしゃいました。 ひたすらに良いカゴを良いカゴを・・と求められた廣島さんの言葉は、今も数多く私の中で響いています。