軍鶏(しゃも)かご  



 地元からの注文で、「軍鶏(しゃも)かご」を編みました。高さは90cm弱、闘鶏用としても知られる軍鶏は首が伸びてすらっとした姿が格好良いらしく、そのためカゴは高めに作ります。今回は、軍鶏ではなく普通の鶏を入れる目的で使いたいとのことでしたが、私はこの注文を受けるにあたって、熊本市の県伝統工芸館を訪れて、そこに所蔵されている昔の軍鶏かごを参考にしました。職員の方には無理を言ってカゴを直接に手に取らせてもらい、形・編み方・寸法など、色々とメモさせていただきました。あらためて、感謝を申し上げます。







 下写真、カゴの上部は輪弧編みと言って、中心に円形の穴を作ります。骨ヒゴ一本の長さは9尺(約2.7m)、腰が痛くならないように、丸太を積み上げて板を載せ、その上で編んでみました。(ちなみに、ただ六つ目編みだけで作る「玉入れの籠」のような軍鶏かごもあります。)




 胴体部分は、六つ目編みに移行します。天井の梁から竹の輪を吊るし、それをカゴにはめ込んで徐々に広がっていく感じを調整しました。竹職人の廣島さんは、「カゴも道具じゃけんど、その道具を作る道具も大事じゃの」と、言われます。身体への負担が少ないよう、また、思い描く姿を形にしやすいよう、自分なりに少し工夫してみました。軍鶏かごは、「茶ベロ」に次ぐ史上2番目に大きい生活のカゴ。膝を曲げれば私もすっぽり入る大きさです。ふと、時代劇などで見かける、昔の罪人を護送する唐丸籠を思い浮かべました。
 


 下は、底にあたる縁巻きが終わったところで撮ったもの。伝統工芸館で参考にした軍鶏かごは、骨ヒゴ38本で縁は4周巻きでしたが、私は骨ヒゴ39本の5周巻きにしました。それでもカゴの目は大きく、縁巻き竹の巾を広く取るのが大変でした。地面に置いて荒っぽく使われるところなので、竹は磨かず、写真は作りたて直後の青さです。
 



 カゴを納品に訪れた朝、鶏を入れたところの写真を撮らせてもらいました。普段は小屋で飼われていますが、時々こうやって外に出して、雑草や虫などを食べさせたりするそうです。右写真は、オスは自分一羽だけだと落ち着かないので、続いてメスの鶏を一緒に入れるところです。



 上部の穴は、見本を参考に直径が6寸5分(20cm弱)。そこから餌や鶏自身をカゴに入れるのに便利ですが、メンドリのように体が小さいものは、飛び上がって外に逃げ出す可能性もあるとのこと。その時は念のため、板や石などの重しを載せて穴をふさいだ方が良さそうです。「この穴にかぶせるフタみたいなカゴがあってもいいかもしれないね」という話になり、後日、必要があればウナギ籠のようなフタを作ってみるかもしれません。