梅干バラ   



 「梅干バラ」を、注文で二つ仕上げました。以前も同じ方から頼まれて編んだことはありましたが、今年は更に大きいバラが欲しいということで、特大サイズの直径70cm弱で作りました。塩漬けにした梅の実がより干されやすいように、目が詰まった網代編みではなく、しょけ(ザル)と一緒のゴザ目編みで作っています。通気性を更に高めるため、ヒゴ一本一本は、内側の角を削って断面をカマボコ状に。縁(ふち)は、針金や籐(とう)ではなく、同じ竹で巻いて仕上げています。ザルの縁巻きは他のカゴ類と比べて難しく、しかもこのように平たくなると、角度が急になって更に苦労します。




 下写真のように、梅干バラを作る時は、竹の板を何本か挟んで一緒に編み込みます。弟子入り時代に習った時はこのようなことはしませんでしたが、底面をより平たく、かつ頑丈に、そして隙間をさらに作るため、独立後、私なりに考えて作ってみました。板は最後に丁度良い長さで切り取り、その後、床に置いたときにぐらぐらしないよう、竹の足をはめ込みます。




 下は、縁巻き途中のところ。3寸8分(約11.5cm)の間隔で竹を差し込み、全部で7周します。(写真は、4周と少し巻いたところ) 一周で使う竹の長さは約2.7メートル、7周するのに計20メートル弱が必要です。一本では足らないので、途中で何回か継いで仕上げます。




 私が尊敬する青竹の職人さんが、「竹で巻いてある盆ザルなんて他にはねぇわい」と、おっしゃっていたのを思い出します。平たいザルを竹で巻くことはそれほどに大変だということを、私なりに痛感しています。どんなに苦労してどんなに頑張っても、竹は、自分が思うようには決してなってくれません。

 カゴ作りの際、どこで自分を納得させるかはいつも悩むところです。カゴの形によっては、そのカゴに合った作り方があるのでしょう。多分、竹の縁巻きより、ツヅラで括ったりする当て縁(あてぶち)仕上げの方が、この手のザルには向いているのかもしれません。仕上げてみればただのザル、しかし、その作る手間を身を以って思い知るとき、私は青竹の仕事に複雑な思いを抱かざるを得ません。





 上の写真は、去年の7月に撮った、塩漬けした梅をその方が天日で干されているところです。私が数年前に作った梅干バラです。竹に載せられた梅を見ると、ご飯が美味しく思えてきます。こちらは間もなく梅雨入り、それが明けると、再び梅干バラが活躍する時期です。今年はこの特大バラが加わり、より多くの梅が干されるのでしょう。自分が作るものは生活の道具でしかありません。来月の土用の頃、やがて「梅干し」が美味しくできあがる時、青竹の仕事はこれで良いと肯定されるのだろうと、今は自分なりに納得させています。