うなぎ籠  



 昨日の朝、「ウナギが獲れたよ」と、地元の方がカゴに入れて突然に訪ねて来られました。前日の夜、ここから7、8キロほど下流の場所に、付け針でエサを仕掛けていたとのこと。「上りウナギ」のシーズンはもう終わっているらしく、今は岩陰にこっそり潜んでいるところをエサの匂いで誘き寄せます。明け方早くに見に行ったらウナギが針に掛かっていて、帰り道、わざわざ私のところに立ち寄って見せにきてくださったのです。

 カゴ自体は私が今年の梅雨前に編みました。まだほんの数ヶ月しか経っていませんが、驚くほどに色が変わっていました。カゴの高さは約50cm、ウナギは尻尾が少しでも出るとするっと外に逃げてしまうので、かなり高めに作ります。





 タライに出してみると全部で3匹。一匹は紐にからまったとのことでもう動かなくなっていましたが、残りの二匹はまだ元気でした。飲み込んだままの針の糸を引っ張ると、かなりの力で暴れ出します。恥ずかしながら、私は天然のウナギをこうやってじっくりと眺めるのは初めてでした。カゴは作るばっかりで、実際に獲られたウナギを見ることはまだ無かったのです。




 下写真は、ウナギがカゴの中に入っているところです。「うなぎ籠」は、中央部が盛り上がるように上げ底に作ります。これは、ウナギが内部で周囲に沿って長々と横たわれるようにするためで、かつて師匠からその理由を聞いたとき、私は何となくそういうことかと納得したのを覚えています。今回、こうして実際に丸く寝そべっているのを見て、ようやく師匠が言ったことを十年経ってこの目で知ることになりました。

 



 先日の背負い籠もそうでしたが、このようにウナギを抱え込む貫禄充分な姿を見ると、私はどこか不思議な違和感と驚きを覚えます。現実に働くカゴに接する時、あれやこれやと勝手に苦労した記憶とのギャップを感じるのでしょう。青竹は、山の一部をそのまま切り取って「道具」を作らせてもらう仕事。こうやって汚れることを厭わない本来の姿に立ち戻るとき、余計な力が入る自分の思い込みを教えてくれます。

 ところでこのウナギ、持ってきて下さった方が親切に、一匹をその場で包丁でさばいて私にくださいました。おかげさまで昨日の昼は美味しい鰻丼を頂くことができました。本当に感謝、どうもありがとうございました。