23年目
23年目に入りました。 昨年後半は、地元の注文が増えて、実用的な大きめのカゴをよく頼まれました。 下写真、左は直径2尺強、約65cmの平たい干し物ザルです。 右は高さ50cm、楕円形の背負カゴです。通常の「かれてご」とは違いますが、物が入っていないとき、なるたけ軽い方が良いとのことで、このように目の空いた六つ目の編み方になりました。
下は、縁も磨かずに編んだ、「一斗じょけ」です。 少し深めに作りました。 地域によって違いますが、こちらでは浅いと損した感じになるらしく、深めに編むと喜ばれます。 ザルは、浅すぎて平たいのも大変ですが、深すぎるのも、また作るのが難しくなります。
下は、直径80cmの二重(ふたえ)バラです。 網代編みと六つ目編み、二つに重ねて仕上げます。 このバラはもともと薩摩地方に特有なもので、源流は東南アジアと思いますが、ここ水俣は県境に位置し、このような鹿児島の竹細工もよく見かけられます。 注文を下さったおばあちゃんは、以前にも直径1mのバラを頼んでくださいました。 小豆を干したりするのに使われるそうです。
水俣のカゴ作りは、山間部の温泉湯治場が発祥の地と言われています。 そこには二つの系統があり、一つはこのような薩摩のバラを得意とする流れ。 もう一つは、一斗じょけのような丸ザルを主とする流れだったと聞いています。 そして、私が出会った3人の職人たちは、師匠含めてみな後者の部類に属していました。 しかし時々は、このようなバラ系統の仕事をすることもありました。
上写真は、師匠の畑小屋から出てきた、「肥(こえ)じょけ」です。 肥料などを入れて運ぶザルで、ヒゴも太く、自家用にざっと作られています。 小屋の奥に埃まみれでうずもれていましたが、これを発見したとき、私は一瞬で心が捉えられました。
水俣に暮らして22年が過ぎ、自分の竹細工がこの土地から大きく影響を受けていることを思います。 今度はもう少しこういったカゴにしようかと考えて作り始めるも、結局、着地点はいつも一緒です。 鳥の雛がはじめて見たものを親と思い込むように、私が初めて竹に触った場所と、そこで出会った職人たちの手仕事は、無意識のところで自分を捕まえているように感じます。