団子じょけ
何年かぶりに、「団子じょけ」を作りました。 ご飯じょけと同様に、カプッと噛み合うフタ付きのカゴです。 その昔、団子などのおやつを入れて、風通しのよいところにぶら下げて使われました。 中に煮干しを入れることもあり、地域によって形は少し違いますが、「いりこカゴ」とか、「だしじょけ」などとも呼ばれます。 地元の方が言われるには、まだ小さかった頃、学校から帰ってきてまずはじめにすることが、この「団子じょけ」に何が入っているかを確認することだったそうです。 今も昔も、子供たちにとっておやつが楽しみであることに変わりはありません。
今回編んだのは、少し大きめの直径35cmです。 柄を3本挿して、ツヅラで括っています。 底には、細い丸竹を四つ、足代わりとしてつけています。
フタ作り、最初は骨ヒゴ5本+5本で編み始め、その後、半分くらいまできたら、20本を円形に360度ぐるりと並べます。 二枚重ねる形で手間はかかりますが、師匠は、「その方が品が良かもんなぁ」と、よく言ってました。 ヒゴ幅は一ミリ程度。 継ぎ目を少なくするため、長くヒゴを取って、2本で放射状に編み進めていきます。
その後、下本体の内径に合わせて、骨ヒゴをじわっと曲げながら中に入れ込みます。 下写真くらいまで来たら、ようやく少し、ひと心地がつきます。
その後、急に折り曲げて、急に起こします。 折り込む角度を、下のカゴの縁に沿うようにうまく調整しないと、フタはぴったりとはまってくれません。 よくこの段階で失敗して、泣く泣く一からやり直し・・・なんてことも多いのですが、今回は、若干の修正はあったものの、何とか無事に進みました。
その後、下本体の縁にかっぷりと噛みつくように、二段に縁巻きをして溝を作ります。 本体と触れ合うところは、身で巻いています。 皮と皮だと固くこすれるので、こちらの方がしっくりと食いつきが良いように思います。 フタ作りは繊細な作業で、廣島さんはかつて、「壊れやすいフタは、下本体の一生の間に、二回は編んであげる必要がある」と、おっしゃってました。
水俣では、このようなフタ付きのカゴ、昔の職人は小さいものであれば一日に2個作ってようやく一人前と言われたそうです。 フタを編み進めるとき、それがくるくると風車のように回っていたとも聞きます。 竹製品がまだ暮らしに多く残っていた時代、彼らはひたすらにカゴを編み続け、そうして人々の暮らしを陰で支えてきました。
最近は、盲目の女性芸能者、瞽女(ごぜ)さんに関する本を読んでいます。 竹細工と世界は違いますが、師匠たちの田舎まわりの生活と多く重なるところがあることを、個人的に感じています。 小林ハルさんのことは以前から存じ上げていましたが、今回は、最後のお弟子さんだったという萱森さんの本を読みました。 自分は瞽女ではないというところには、深く共感するものがありました。
私は職人と呼ばれることに引け目があり、それがコンプレックスでもありますが、この年になると自分の竹細工の限界も分かり、少しずつ今の在り方を受け入れるようになっています。 それは、自分が憧れてきた職人とはほど遠いものですが、それでも、多くの名もない人たちが繋げてきたものに触れる安心感を、私なりに感じています。