球磨焼酎「武者返し」
直径60cm強の大ザル「二斗じょけ」を10枚仕上げて、納品先である隣の人吉市にある球磨焼酎の蔵元、「寿福酒造場」を訪れてきました。 寿福さんは創業明治23年の老舗で、数ある球磨焼酎の蔵元の中でも唯一、昔ながらの常圧蒸留にこだわり、またこの世界では珍しい女性杜氏の方(4代目)です。 ここで作られる米焼酎の原酒「武者返し(43度)」を私が知るようになったのは、ほんの数年ほど前のこと。 私がカゴ屋の道を歩み続ける上でとてもお世話になったある方が好きな焼酎で、その彼から教えてもらったことがきっかけでした。 以来「武者返し」は、私にとって思い出のある焼酎です。
焼酎を仕込む良い香りに包まれて、蔵の中に私が編んだ「二斗じょけ」を運び入れると、そこには焼酎作りに長年しっかりと使われてきた、たくさんの古いしょけ(ザル)達がありました。人吉にはもう昔ながらのカゴ職人はおられなくなったそうで、今回ふとしたご縁で私が注文を頂きましたが、将来は私が編んだザルで仕込まれた「武者返し」を飲める日が来るかと思うと、感無量です。
なお下写真は、寿福さんのところで使われている、米120kg以上は楽に入るという大きな桶。 竹のタガでしっかりと巻かれています。 79歳の桶職人が今も頑張っておられて、戦後まもない頃は数十軒以上あったという人吉の桶屋さんも、今では彼一人のみとなりました。
伝統的な常圧蒸留で作られる「武者返し」は、寝かせれば寝かせるほどに味が深まります。 蔵元で最低1年以上は寝かせてから瓶詰めして出荷されるそうですが、その後新聞紙等にくるんで冷暗所に保管すれば、更に味は半永久的に熟成されて深まっていくとのこと。 希望によっては、甕(かめ)に入れて販売することも可能とのことで、興味がある方は、ぜひ直接に寿福さんに問い合わせてみてください。
最後に、球磨焼酎に関するHP(「焼酎盆地」http://www.linkclub.or.jp/~amana/index.html)の中に、「カゴ爺さんのこと」という頁があります。 私がこの頁と出会ったのは、つい先週のことでした。 私はこんなカゴ屋さんの話を聞くと、居ても立ってもいられなくなります。 HPの管理人さんが幼少時代に一緒に遊んでもらったという「カゴ爺さん」は、静かに竹細工の時代を生きられました。 今回ご許可を得て、この頁でリンクを張らせていただきます。 どうもありがとうございました。