三角じょけ




 「三角じょけ」とは、三角形のザル(しょけ)のこと。 下写真は、幅の長さが尺一寸(約33cm)で作っています。 直線と角があるので、普通の円形よりは縁巻きが難しくなります。 丸いザルは全国どこにでも見かけますが、三角形のものは九州南部の方だけでしょうか、他で目にすることは意外と少ないように思います。







 下は、先日仕上げた、一回り小さい幅9寸(約27cm)の「三角じょけ」です。 蕎麦を盛るのに使いたいとのことで、底を浅めにしています。 竹ヒゴを磨いて作り、また、食卓に置いたときグラグラしない様にして欲しいとのことだったので、足を三点付けました。







 その足は、節を残したヒゴを新たに作り、骨ヒゴに重ねて一緒に編み込みました。 シンプルな「しょけ」は、とにかく作るのが難しいです。 編んでいく時、なかなか思う形にはなってくれないこと、そしてまた、竹で仕上げる縁巻きが、何より自分をその緊張感からどっと疲れさせます。 竹細工を始めて15年になりますが、今でも巻き終わった後すぐには立ち上がれないほどです。






 下写真は、私の師匠が生前編んだ、色々な「しょけ」達です。 丸い形の「五升じょけ」、幅尺1寸の「三角じょけ」、そしてU字型の「片口じょけ」です。 「片口じょけ」は、当て縁(あてぶち)仕上げで針金で括ってあります。 水俣ではこんな「しょけ」達が、米や野菜を洗ったりするための道具として、多くの人たちの生活を支えてきました。 師匠が亡くなって早3年、今はどれも綺麗な飴色になっています。


 昨年は、廣島さんが亡くなられました。 また、私が同じく尊敬する大分の職人さんも亡くなられたことを、先日知りました。 時代がどんどん変化しているのを感じます。 竹細工も今後変わらなくてはいけないのかと、焦りを感じないわけではありませんが、それでも彼らが編まれてきた昔のカゴ達に、私は強く惹かれます。 特に「しょけ」は、人々の暮らしと共にずっと当たり前にあったものでした。 それでいて作るのが難しく、廣島さんもおっしゃられたように、こうすればうまくいくという絶対の極意には、自分は一生かかっても達し得ないように思います。






 私が暮らす集落でも、三人の方がこの夏に初盆を迎えられました。 内お一人は、私がここで一番お世話になった方です。 享年87歳で亡くなられました。 何のつてもない移住者である私を、保護者のようになってずっと面倒を見てくださいました。 HPで紹介しているカゴを持った写真、その多くは、彼が背負ったり持ったりしてくれたものです。 分からないことは、私は何でも彼に聞きました。 実際の竹の道具の使い方を、その暮らしぶりや生き様とともに教えてくださいました。 S人さん、どうぞゆっくり休まれてください。 本当にありがとうございました。