「一斗じょけ」をくださった大正生まれのおばあちゃん。 その後も何度か顔を出しているうち、実際に彼女の家に電気が来たのは、昭和50年だったことが分かりました。 彼女はずっと日記をつけておられます。 「くもりでしたが 電気が夕方つきました 何となく淋しかった」 その年の5月9日の欄に、短く鉛筆でこれだけ書かれています。 その前日まで、彼女にとって夜の明かりはカンテラ(ランプ)でした。
若い頃の写真も見せていただきました。 「一斗じょけ」を編まれた彼女の夫の写真もありました。 ある祝いの式で、彼はその「一斗じょけ」を頭にかぶって踊られています。 大正8年生まれの彼は、電気が来て僅か二年後に亡くなられました。 彼女と色々接して感じるのは、強さです。 むろんご自分ではそんな意識もなく、与えられた環境を受け止めてたんたんと生きておられます。 彼女は人と話されるとき、相手の目をじっと見つめて真っ直ぐです。 私は彼女が大好き。 90年近くの人生に頭が下がります。