水俣では、籠(かご)・笊(ざる)のことを、「てご」あるいは「しょうけ(しょけ)」と、呼んでいます。
(「ヒゴを磨く」とは、竹の表皮を包丁の刃で擦って薄皮を削り取り、艶を出すこと。竹が枯れてきたとき、いわゆる飴色に輝きます。磨かない場合は、少しくすんだ柔らかい感じで色が深まっていきます。)
- ご飯じょけ (夏場、ご飯を入れて涼しいところにぶら下げておく、フタ付きのザル。冷飯の風味が増してより美味しくなります。炊飯器が普及する前、どこの家庭でも見られた生活必需品でした。フタ付きの籠が一番技術的に難しく、これがきちんと編めたら一人前だと、師匠からよく言われました。写真は直径1尺(約30cm)の一升取り。)
下は、直径1尺2寸(約36cm)、二升取りの大きさで作っています。
(ジパング倶楽部にて使用。撮影:阿部了)
蓋(ふた)
フタを編むのは、とても繊細で、かつ緊張する作業です。
下のザルの内径に合わせ合わせしながら、噛み合うところをR型に編み込みます。
その後、厚みと高さを微妙に調節しながら「縁巻き」で溝を作り、
それが下本体の縁に、タッパーのように、丁度かっぷりと噛むように仕上げます。
- 買い物籠 (買い物時などに持っていく手提げ籠。高さは7寸(約21cm)で編み、上口は約24cmx36cm。柄は三本挿して竹釘を打ち込み、上部をツヅラで括っています。中央の柄は、横にぶれないよう柄ごと一緒に縁巻きしています。一番右は、実際に手に提げてみたところ。)
下は、注文したお客さんが送ってくださった写真。青みが少し落ち始めた頃のものです。
下は、上口・深さともに、一回り大きいサイズ。一升瓶が6本ほど入ります。約30x41cm、高さは8寸(約24cm)。
- いなりぐち (口の開いた卵型の「片口じょけ」のこと。水俣では、縦目に編んだ口無しの「片口じょけ」の方が一般的ですが、これは横目に編んで、受け口を作ります(黒い部分は、ツヅラです)。普通のザルとして使われる一方、穀物を移し変えるときなどに使われます。写真は一斗入りで、約46cmX57cm。)
下は、一斗丸ザルと、一斗いなりぐちを並べてみて。
下写真、左2枚は縦の長さが、それぞれ30cmと40cm。 右3枚は、さらに少し大きめの縦42cm。
- 団子(だご)じょけ (団子などの甘いものを入れたりするフタ付きの籠。煮干し(いりこだし)を入れて猫から守る、「いりこカゴ(だしじょけ)」とも呼ばれます。柄は三本挿し込んで竹釘で止め、上部を葛(つづら)で括っています。フタの直径は約28cm。)
下写真は、下本体の口をそれほど急角度には絞らず(上口直径約35cm)、そのまま蓋を付けたもの。
底は、竹を火であぶって直角に曲げたものをはめ込んでいます。
- 茶びつ (湯飲みや急須、菓子類を入れたりする、円筒形のフタ付きの籠。直径1尺(約30cm)、下本体の深さ約13cmで編んでいます。底は、骨ヒゴ8本X8本の菊底編みで、裏には竹を十字にはめて補強しています。)
中に茶器類を入れると、こんな感じです。下写真は、少し大きめの直径35cm。
- うなぎてご (餌となるミミズなどを中に入れ、川につけてウナギを捕獲する円筒状のカゴ。長さは2尺3寸(約70cm)で編んでいます。編みたての時は、最初しばらくの間、田んぼの水につけて、竹の匂いを消してから使ったりします。)
こした
ウナギが入る口の部分を、「こした」と呼びます。
先端部を紙のように薄く削り、ウナギがするっと入った後は、二度と外に出られないようにしています。
通常の「こした」は、下の本体に節(ふし)が引っ掛かるように、骨ヒゴ11本の皮側を内に向けて編みますが、
竹は内側に曲がろうとする性質があるので、一旦入ったウナギをより逃げにくくする為、
下写真は骨ヒゴの皮を外に向けて作っています。(本体への引っ掛かりを作るため、別途縁巻きをします)
下写真は更に念を入れて、一本一本の骨ヒゴの中央部分を鍵形に削り、鳥の羽根状に並べたもの。
一番、手間のかかった作りです。
- うなぎ籠 (捕獲したウナギを入れておく籠。深さは16寸(約48cm)、ウナギは飛び上がって逃げることもあるので、高めに編みます。底面は上げ底にすることにより、ウナギが傷まぬよう籠内部で周囲に沿って長々と横たわることができます。一番下は、ウナギ3匹が実際にカゴの中に入っているところ。地元で捕れた天然ウナギです。)
下は、蓋を二重に編んだもの(深さ6寸と2寸)。真ん中の蓋にミミズを入れるとのことで。
肩に背負って運ぶとのことで紐は長めに。 底は、念を入れて補強の竹を更にはめ込んでます。
下写真は、注文で低めに編んだ「うなぎ籠」。下本体の高さは約一尺(約30cm)。