千葉の箕作り
千葉県の匝瑳市にある木積(きづみ)という地区を訪れてきました。 この辺りの集落は昔から箕作りが盛んなところで、かつては関東一円で多く販売されていました・・・が、農具としての需要が減った現在、箕を編まれる方はもうごく僅か。 今回、今も現役で箕作りをされているご夫婦に話を聞かせていただくことができました。
写真は、一斗入りで、横幅約70cm。
この地域で編まれる箕は、藤(ふじ)や篠竹(しのだけ)を使用して編まれる、いわゆる「藤箕(ふじみ)」です。 以前にも紹介した、鹿児島の日置の箕(いわゆる「桜箕」)と作り方はほぼ同じですが、使用する材料が違ってきます。 鹿児島の箕作りで使われる「桜の皮・蓬莱竹・ツヅラ」が、こちらでは「藤の皮・篠竹・藤の芯を裂いたもの」に。
そして、縁(ふち)に使われる材料が、「山ビワの木」ではなく「孟宗竹」になります。(ちなみに昔は、「エゴの木」を使うことが多かったそうです。) 「木積の箕」は、男女や家族によって分業体制ができていて、「イタミ(鹿児島の箕では、ハネミと呼ばれる部分)」を編む人と、それを縁に取り付けて仕上げる「仕立て」の人に分かれます。
専業でずっと昔から箕を編まれてきたご夫婦です。
箕作りは、さまざまな自然の材料を確保するのが大変です。 材料となる篠竹と藤、孟宗竹は、秋から冬の時期が良いときに伐採し、その後加工して、いったん天日で乾燥させるそうです。(藤は、数ヶ月ほど地中に埋めて、柔らかくしてから外皮を剥ぐとのこと)
左写真から、篠竹、籐(外皮と内側の部分)、家の裏山で干している孟宗竹。
完成した箕と、「仕立て」をする前の「イタミ」。
木積地区の箕作りは、伝承によれば今から300年以上も前、加賀白山信仰の「おせんさん」という、ある一人の女性によって伝えれらたのが始まりだとか。 日本各地には他の編み方の箕もありますが (四国などに見られる「網代編み」や、一部東北などに見られた、大きな木の皮一枚で作る「皮箕」など)、千葉と鹿児島の「ゴザ目編み」の箕、 こんなにも日本の東西で距離が離れているのに、編み方がほとんど一緒なのはとても不思議に思います。 その土地土地で採取可能な自然素材を使って、各地の「箕」の技術が受け継がれていったのでしょうか。